その3 一喜一憂の弟子修行の日々

去年の8月18日、噺の会じゅげむ第185回駅前寄席、真夏の暑い日の事でした。ミナミの千日前商店街に有る喫茶店「アメリカン」で笑福亭鶴二師匠とお会いし、息子の弟子入り志願をしました。1時間程の談笑の後、「息子を弟子にして貰えませんか?」との問いに師匠は「どうぞ!」と言って下さいました。私は拍子抜けしてガックリとこけてしまいました。「良いんですか?」、「良いですよ」。息子に「弟子にしてくれはるって!」と言うと「ハハハハハハ」と笑い、次の瞬間、嬉しさのあまり泣き出しました。

来年大学卒業後、正式な弟子入りまでの間、LINEで連絡を取り合い師匠の元へ通う約束をしました。8月末に初めて師匠のご自宅へお伺いさせて頂き、師匠はとても優しく息子を受け入れて下さいました。このまま順風満帆に物事が進んでくれれば良いのですが、そんな事が有る訳が有りません。鶴二師匠が通う日本舞踊のお稽古のお供の帰りに、地下鉄駅のベンチで泣き崩れたとメールが有り、私は「終わった」と思いました。恐る恐るメールを読み進めると泣き崩れた原因や、その後の師匠の対応で信頼関係が深まったと感じ安堵しました。正式な弟子入りまでの7ヶ月の間、色々な事が有りました。その度に師匠からメールや電話で報告を頂き、一喜一憂していました。息子は本当に咄家さんに弟子入りして、やっていけるのだろうか?やはり弟子入りは無謀だったのでは無いか?と自答自問しましたが、後悔するよりも先に進む事が息子の為には最善だと思いました。「この道を行けばどうなるものか? 危ぶむ無かれ、危ぶめば道は無し。踏み出せばその一足は道と成り、その一足が道と成る。迷わず行けよ行けば分かるさ!」と言う一休さんの言葉を思い出し(アントニオ猪木の引退時に、リング上で言ってた事で初めて知りました)、後悔するより失敗しても良いから、前を向いて歩んで行こうと決断しました。

今年に入り2月下旬からコロナ渦の中、紆余曲折の末、4月より咄家としての正式修業が始まります。これからが本当に大変で有るとはその時は未だ分かっていませんでした。私の所属する素人落語の会「噺の会じゅげむ」の代表寿亭司之助さんにお借りした、NHKの朝ドラ「ちりとてちん」を全て観ましたが、正にドラマの様な良い事も悪い事も有るスリリングの連続ですわ。
                                              2020.8.10

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それ行け! 夢二!!