京都編 その三   愛 宕 山       

 
 落語「愛宕山」は、2007年のNHK朝ドラ「ちりとてちん」でヒロインが出会った最初の落語として
 
 重要な役割を果たしています。その愛宕山へ当会のメンバー7名が果敢に? 挑戦してみました。
 
 先導役は、山と落語をこよなく愛する三流亭志まねさんです。  (2009.10.11)
 

<落語「愛宕山」のあらすじ>


 京都のとある大店の旦那さん、大阪をしくじって京都へ流れてきた幇間の一八と繁八をお供に

 芸者衆を引き連れ、愛宕山に野駆け(ピクニック)に行きます。そして、宴もたけなわとなった頃

 「かわらけ投げ」を始めるのですが、旦那さんは趣向として小判を崖下に投げ込みます。それを

 何とか手に入れようと、幇間の一八はとんでもない方法を思いつき崖下への着地に成功します。

 そして、まんまと旦那さんが投げた小判を手にするのですが・・・


 今回の旅のスタート地点になる嵐山の渡月橋から

 望む愛宕山(奥に見える山)です。標高924m。

 物見遊山で行くには少し高いような気も・・・

             

 

 嵐山からは京都バスに乗車して、登山口にあたる

 清滝へ向かいます。落語では、京都市中の祇園から

 二条城を後目に殺して歩くことになっています。

 落語の中には「試みの坂」という名称で出てくる

 「試峠」なんですが、今回は、車1台分の幅しかな

 い狭い狭い清滝トンネルをバスで一気に通過しまし

 た。

 

 そして、いよいよ愛宕山登山のスタートです。今回

 参加の七人衆(左から、志まね、くじら、司之助、

 久句、志ん友、哀楽、小輔)は、平均年齢がちょう

 ど50歳。これからは、落語のとおり、愛宕神社参

 詣表登山道を登ることになります。



               
【写真は合成です】

 

 さて、登山道に入った一行は、愛宕神社の朱塗りの

 鳥居をくぐり、表参道をさっそうと歩き出します。

 スタート直後は、みんな笑顔だったのですが・・・

 

 意気揚々とスタートしたメンバー達も延々と続く上り坂と

 階段で表情も真剣になってきました。

 

 やがて、愛宕神社までの行程の半分「二十五丁目」へ。

 落語の中の挿入歌にも出てきます。

♪ 愛宕山坂 え〜え坂 二十五丁目の茶屋のかかばば
 
  旦那さん ちと休みなんし。

  しんしん シン粉でもウンと食べ 食べりゃウンと坂や、

  やんれ坂……、坂、坂、坂 ♪

 

 昔は茶屋があったところに休憩所がありました。落語に

 登場する「かわらけ投げ」はこの場所のようです。でも、

 今は茶店がないので「かわらけ投げ」は出来ません。

 
※ 桂米朝師匠のネタでは「二十五丁目」ですが、お弟子さんであった

 枝雀師匠や吉朝師匠は「二十四丁目」になっています。ここのところ

 は意外とあいまいなようです。

 

 というところで、落語にも出てくる「尻突き」の実験です。

 後ろの人が前の人のお尻を突きながら坂を登ります。

 突かれる方も突く方も弾みがついて早く登れるらしいの

 ですが、
実際に「尻突き」をやってみると、なるほどテン

 ポよく登れます。
でも、長続きはしないかも・・・

 

 上に登るにつれて、坂はますます険しくなってきます。

 時たま、誰かが発する冗談も空回りするくらいに疲れが

 顕著になってきました。

 そして、7合目の休憩所へ到着。

 

 落語では、この手前の二十五丁目の茶屋で「かわらけ

 投げ」をすることになっていますが、
ここの休憩所の前に

 「かわらけ投げ」の解説がありました。
実際は、それぞれ

 の茶屋でやっていたのかも知れませんね。

 途中、コースを外れてちょっと寄り道。

 昔のケーブルカーの駅舎跡です。戦時中に鉄の供出に

 より廃業になったとのことで、
建物はかなり古いです。

 その後、コースに戻って、あと少しでゴールの愛宕神社

 という地点。
そんな中、先導役で自他ともに認める山男

 の志まねさんに異変が・・・。
他のメンバーより、相当に

 疲れている様子。
汗の量も半端ではありません。一体、
 
 志まねさんに何が起こったのか!? (その謎は後で判明)

 難行苦行の末、ついに山頂付近にある黒門と呼ばれる

 山門が視界に入ってきます。


 昔の黒門付近の写真ですが、登る人の服装と左の

 駕籠? 以外は全く変わりません。この門は、白雲

 寺というお寺の山門で、昔は神仏習合だったので、

 愛宕山には神社と寺が混在していたそうです。そ

 の後、白雲寺が破却され、山門だけが残りました。

 

 そして、愛宕神社の本殿に到着。

 

 とりあえず、第一目標を達成し、無事に参拝を終える

 ことができました。聞くところによると、愛宕山は、古来、

 修験道の修行の山だそうです。

 

 ここで、山男の志まねさんが大汗をかいて苦しみながら

 登っていた理由が判明。
何と、リュックの中に2リッター

 入りの水の入った
ペットボトルが6本と缶ビールが出て

 きました。これは
重い! その上、先導役として、前日に

 同じコースの下見登山も敢行・・・。
そりゃ、人一倍疲れ

 るはずです。
水は、水道がない神社の方々への奉納で、

 
ビールは、メンバーの昼食時の飲料用でした。

 

 

 そして、その貴重なビールで乾杯!!(自前のビール持参の強者もおられました) 

 このビール、大汗をかいた後だけに実に旨かったです。

 気配りの行き届いた先導役の志まねさんに改めて感謝の一瞬でした。

 そして、つかの間の至福の時を過ごした後、またも苦難の修行が続きます。

 

 文字どおり、肩の重荷を下ろした志まねさん、気楽に

 なったのか、ビールを飲みながらの下山です。本来なら

 同じコースを下山するのですが、今回は「かわらけ投げ」

 も重要なイベントなので、近辺で今でも「かわらけ投げ」

 をやっている高尾の神護寺へ向かいました。

 

 途中、絶景ポイントで小休止。

 

 また、由緒ある月輪寺に立ち寄りました。ここは、

 かの明智光秀が本能寺の変の直前に愛宕神社に参詣

 し、連歌の会を催した際に、おみくじをひいたお寺

 だということです。

 その後も、ちょっと寄り道をして「空也の滝」へ。念仏を

 唱えながら諸国を行脚したという空也上人の修行の場だ

 そうです。ここへの道のりも結構険しかったですが、滝の

 そばに寄ってみると、マイナスイオンのせいか、疲れも

 癒されました。写真は、
滝に打たれて修行をする(ように

 見える?)志まねさん。

 杉木立の中を神護寺へ向かうメンバーです。ここで、

 
花粉症の人が一言。「季節が春やなくてよかった・・・」

 日も暮れかかって来た頃、神護寺の参道に到着。この

 参道も延々と階段が続く道程だったので、メンバー達も

 
疲れた身体にむち打つように一歩一歩進みました。

 そして、念願の「かわらけ投げ」に挑戦です。

 皆、感慨深げに谷底を見下ろしています。

 「かわらけ」は素焼きの皿のような器(さかづき)です。

 これを崖下に向けて投げ、厄除けの祈願をします。

 でも、投げ方が意外と難しく、すぐに失速してしまい、

 なかなか落語(天人の舞、お染久松夫婦投げ、獅子の

 洞入り)のようには飛んでくれません。

 そして、落語にちなんだお約束・・・

 「かわらけ」の代わりに小判を投げます!? (@_@)

 落語では、旦那が散財して小判を投げたので、幇間が

 それを何とか手に入れようと大騒ぎになるクライマックス

 のシーンですね。

 「かわらけ投げ」の場所から見下ろした谷底です。

 ここも絶景と言えるでしょう。愛宕山からは、この谷沿い

 を歩いて来ました。

 そして、これも落語のお約束。傘をさして崖から飛び降

 りようとする幇間と
それを手助け? して突き落とそうと

 する幇間仲間の図です。
でも、この実験は、諸般の

 事情により中止しました。(当たり前!?)

 神護寺の境内の茶店の床几でゆっくりと京都の秋を

 満喫しました。

 (紅葉が始まっていないのが少々残念でしたが…)

 きちんと神護寺にも参詣します。

 とりあえず、今回の登山はここで終了し、高尾からバス

 で1時間かけてJR京都駅に戻ってきました。写真は、

 駅前にあるライトアップされた京都タワーです。

 ここで、今回のツアーの最後の仕上げ。

 京都タワーの地下にある銭湯へ!!

 こんなのがあるとは全く知りませんでした。登山でドッと

 かいた汗をここで洗い流し、
そして、疲れた身体をお湯

 でゆったりとほぐします。
なかなか心憎い演出。(これも

 志まねさんのプラン)。

 そして、愛宕山登山達成の祝杯はこの店で・・・

 そう、京都といえば、餃子の王将!!

 日曜の夜ということもあり、若い人やら外人さんとかで

 いっぱいだったので、かなり
待たされましたが、やはり、

 ここの餃子は旨い!

 餃子、酢豚、焼きそば等の定番メニュー、そして、冷え

 たビールで乾杯。
わいわいとこの日の山行きを話題に

 盛り上がりました。
改めて、今回の完璧な計画をたてて

 実践してくれた
三流亭志まねさんに感謝感謝です。

 解散後、帰宅して万歩計を見ると、

   
32,763歩

 それも山道での歩数なので、我ながらよく歩いたものだ

 と思います。
この後3日ほどは足が筋肉痛になりました

 が、
これもなんだか心地よい痛みでした。




愛宕山の登場する他の落語のあらすじ

いらちの愛宕詣り(いらちのあたごまいり)

いらち(あわてもの)の男が、霊験があるというので、愛宕山の愛宕神社に参詣に行くのだが、

方向を間違えたり、賽銭箱に財布ごと投げ込んだり、弁当の代わりに枕を持って行ったりという

ドタバタ騒ぎの落語。

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